2慣性系の制御について、次の論文をフォローします。
2慣性系…Homework
[0] 次図のような2慣性系を考えます。
これは次の運動方程式で表されます。
ここで、を操作トルク、を外乱トルクとみなし、また
は軸トルクと呼ばれ、計測可能とします。これを用いると(1)は次式となります。
以下では、一定の角速度での回転時に、大きさ1の定値外乱トルクが発生しても、望ましい角速度での回転させる速度制御問題を検討します。回転体1の速度制御ですから基本はPI制御ですが、回転体2からの外乱トルクの影響を除くために、軸トルク(両軸のトルク差)のFBも考慮します(回転体2の角速度はFBしません)。両回転体の慣性モーメントの大小によって制御ゲインは変わることになります。
[1] 軸トルクFBを加えたPI制御
に注意して、次の状態方程式を得ます。
ここで、からまでの伝達関数
から、次の共振角周波数と反共振角周波数を定義しておきます。
さて、制御目的が達成されているとすると
より
を得ます。したがって
に注意して、偏差系
に対する安定化状態フィードバック
すなわち
を求めます。
ここで本来は2次形式評価関数を設定したいところですが、ゲインに制約をつけるために、上記論文では閉ループ系の望ましい特性多項式を
と設定し、極配置問題を解いています。これは、たとえば
とすると
の形式になること、また減衰係数と固有角周波数を指定できるなどの理由によると思われます。
上の望ましい特性多項式を達成する状態フィードバックゲインは、次式によって計算できます。
数式処理プログラムを用いて、
を代入して、次のように計算できます(は論文中の記号)。
実際
まず、負荷の角速度をFBしなくて済むためには、(20)が必要となり、自身には選択の余地はありません。興味深いのは、(23)から、軸トルクのFBゲインの符号が正にも負にもなることです。
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●数値微分による軸トルクを加えたPI制御
軸トルクは次式のように速度を1階微分して得ることができます。
これを用いると
これはPID制御となっており、軸トルクのFBは不要となっています。
●外乱オブザーバによる軸トルクを加えたPI制御
外乱オブザーバの仕組みは、数値微分を用いた軸トルクを1次フィルタを通したものに等しいことが知られています。これは
を用いて
のように実施されます。以下では、これもPID制御であることを示します。
のように書けるので、コントローラの状態空間表現は次式となります(簡単のためとしています)。
これからコントローラの伝達関数が次式のように計算できます。
外乱オブザーバによる軸トルクを加えたPI制御は、1次フィルタ付微分動作をもつPID制御となっていることが分かります。
[2] 1次フィルタを通すPI制御
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[3] 1次フィルタ付微分動作をもつPID制御
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