補遺1

造船工程計画

造船工程計画とは、ブロック製作のために2種類のリソース(場所、作業員)のタイムライン化(時間軸に並べること)と言えます。2つの計画AB,ACは比較的簡単に求まりますが、この2つを共通の日程で作成するのは簡単なことではありません。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺がありますが、造船工程計画の困難性もそのような状況かもしれません。

定盤計画の難しさ

問題の規模

例題2に対して、次式に基づいて、「問題の規模」を計算してみます。

\displaystyle{(1)\quad N(L,B,\ell,b)=(L-\ell+1)(B-b+1) }

L=4B=4だから、ブロックBLK1については

\displaystyle{(2)\quad N_{\rm BLK1}(4,4,1,2)=(4-1+1)(4-2+1)=4\times 3=12 }

ブロックBLK2については

\displaystyle{(3)\quad N_{\rm BLK2}(4,4,1,2)=(4-2+1)(4-1+1)=3\times 4=12 }

ブロックBLK3については

\displaystyle{(4)\quad N_{\rm BLK3}(4,4,2,2)=(4-2+1)(4-2+1)=3\times 3=9 }

したがって、例題2に対して問題の規模は

\displaystyle{(15)\quad N_{\rm BLK1}N_{\rm BLK2}N_{\rm BLK3}=12\times 12\times 9=1296 }

と計算できます。

本書では、定盤計画について、問題の規模を次のコードで、モードの総数として求めていますす。

OptSeq

#====問題の規模:      
A=[]
for a in prob.act: A.append(a.name) 
print("アクティビティ:",A)  
N=len(prob.act)
print("アクティビティ総数(含待機数):",N)  
M=[]
for a in prob.act: M.append(len(a.modes)) 
print("モード数:",M)  
print("平均モード数:",round(sum(M)/N))
P=math.ceil(math.log10(round(sum(M)/N)**N))
print("問題の規模: 10**",P)   

ここで、RCPSPとして定式化されたモデルを{\bf prob}としています。{\bf prob.act}により、すべてのアクティビティ名のリスト{\bf A}を求めて、その長さを{\bf N}としています。また各アクティビティに付されたモードの個数を並べたリスト{\bf M}を求めています。平均モード数{\bf sum(M)/N}を求め、これを{\bf N}乗することで、問題の規模としています。

RCPSP法の枠組み

rcpsp11.py

OptSeq

#rcpsp11.py
from optseq import *
#====データセット
#i:[名前、期間、後続、資源]
data={
 1:["A01",3,[4,6],3],
 2:["A02",4,[5,7],1],
 3:["A03",6,[8]  ,1],
 4:["A04",4,[5,7],4],
 5:["A05",5,[8]  ,4],
 6:["A06",5,[9]  ,4],
 7:["A07",4,[10] ,5],
 8:["A08",2,[10] ,2],
 9:["A09",2,[10] ,5],
10:["A10",5,[0]  ,3],
}
#====アクティビティ
prob=Model()
act={}
for i in data:
    act[i]=prob.addActivity(data[i][0])
#====先行制約
for i in data:
    for j in data[i][2]:
        if j>0: prob.addTemporal(act[i],act[j])  
#====資源制約  
res=prob.addResource("Resource",capacity={(0,"inf"):10}) 
mode={}  
for i in data:
    mode[i]=Mode("M{0:02d}_{1:02d}".format(i,data[i][3]),\
                                    duration=data[i][1])
    mode[i].addResource(res,requirement=data[i][3])
    act[i].addModes(mode[i])
#====求解
prob.Params.Makespan=True
prob.Params.TimeLimit=1
prob.optimize()
prob.write("rcpsp11.txt")
prob.writeExcel("rcpsp11.csv")

rcpsp11.pyはPython言語で記述されています。

データセットはPythonの辞書データとして定義されており、keyがアクティビティ名となっていて、先行関係はkeyを参照して指定されていることに注意してください。ここでは簡単のために数字を用いていますが、文字列を用いることもできます。たとえばデータセットの定義は次のように行うこともできます。

OptSeq

#====データセット
data={
#"id":["名称",期間,["後続#1"," 後続#2"]、員数],
"A01":["A1(3人)",3,["A04"," A06"],3],
"A02":["A2(1人)",4,["A05"," A07"],1],
"A03":["A3(1人)",6,["A08"," 0"],1],
"A04":["A4(4人)",4,["A05"," A07"],4],
"A05":["A5(4人)",5,["A08"," 0"],4],
"A06":["A6(4人)",5,["A09"," 0"],4],
"A07":["A7(5人)",4,["A10"," 0"],5],
"A08":["A8(2人)",2,["A10"," 0"],2],
"A09":["A9(5人)",2,["A10"," 0"],5],
"A10":["A10(3人)",4,["0"," 0"],3],
}

その他のコードについては、別途詳しく説明します。

RCPSPとは

図1.1

図1.1は「工程’s」で作成されており、作成時のカレンダー(休みなし)が用いられています。ただ例題1は特定のカレンダーに依存しないので、「通し日」を用いて、次のように表すこともできます。

「工程’s」の基礎については、次にまとめています。

「工程’s」の基礎

CT-ERRATA

頁・式
p.3 おきたい思う おきたい思う
p.31 (a=\theta-\piだから)、\sin\theta\simeq \theta-\pi (a=\piだから)、\sin\theta\simeq -(\theta-\pi)
p.83 -x0) [-L 1]*x0)
(Program 52を修正・更新しています)
(8.4) =ke_v(t) =k_ve_v(t)
p.136 (8.15)が成り立つ (8.17)が成り立つ

●本書では、m行n列の行列のサイズを「m  \times n」と表記しています。たとえば(n-p)行n列の行列のサイズは「n-p\times n」となります。ここで、\timesは掛け算(の演算子)ではなく、行数と列数の区切りであることに注意してください。

CTA2 HILSアプローチ

仮想制御実験のためには、厳密な実時間計算ではありませんが、Simulink Desktop Real-Timeが有用です。

コントローラの実装には、Simulink Real-Time, MATLAB Coder, Simulink Coderが有用です。