CT54 補遺5

まず穴埋め問題の解答を示します。太字がキーワードなので、確認してください。

[1] 制御対象の状態空間表現が与えられているとする。これは「状態方程式」{\dot{x}(t)=Ax(t)+Bu(t)}と観測方程式{y(t)=Cx(t)}からなる。ここで、{x(t),u(t),y(t)}はそれぞれ次数{n,m,p}をもつベクトル、{A,B,C}はそれぞれサイズ{n\times n,n\times m,p\times n}をもつ行列である。また、初期状態{x(0)=0}は、平衡状態を表すように選ばれているものとする。

[2] いま、何らかの外乱により平衡状態が乱され、{x(0)\ne0}となったとする。このとき、次第に平衡状態に戻るとき、すなわち{x(t)\rightarrow 0\ (t\rightarrow\infty)}となるとき、制御対象は「漸近安定」であるという。そのための条件は、行列{A}が安定行列、すなわち行列{A}「すべての固有値の実部が負」であることである。

[3] いま、制御対象が安定ではないとき、これを「状態フィードバック」{u(t)=-Fx(t)}により安定化したい。すなわち、閉ループ系の行列A-BFを安定行列としたい。それが可能かどうか調べるためには、「可制御」性の条件{{\rm rank}\ [B,AB,\cdots,A^{n-1}B]=n}が成立するかどうかをチェックすればよい。

[4] 状態フィードバックを実施するためには、全ての状態変数を、「センサ」を用いて計測する必要がある。しかし、これはいつも可能とは限らないので、状態変数の値を漸近的に推定する「状態オブザーバ」{\dot{\hat{x}}(t)=(A-HC)\hat{x}(t)+Hy(t)+Bu(t)}が用いられる。これは、{\hat{x}(t)\rightarrow x(t)\ (t\rightarrow\infty)}となるように、オフザーバゲイン{H}を選択することにより達成される。それが可能かどうか調べるためには、「可観測」性の条件{{\rm rank}\left[\begin{array}{c}C\\CA\\\vdots\\CA^{n-1}\end{array}\right]=n}が成立するかどうかをチェックすればよい。

[5] 状態フィードバックを状態オブザーバを用いて、{u(t)=-F\hat{x}(t)}のように実施するとき、状態空間表現{\dot{\hat{x}}(t)=(A-HC-BF)\hat{x}(t)+Hy(t)}{u(t)=-F\hat{x}(t)}「オブザーバベース」コントローラと呼ぶ。これによる閉ループ系の固有値の集合は、行列A-BFの固有値の集合と行列A-HCの固有値の集合の和集合となることが知られている。したがって、状態フィードバックと状態オブザーバの設計は独立に行うことができる。ただ、制御動作より状態推定が速く行われなければならないので、複素平面上で、行列A-HCの固有値は行列A-BFの固有値のより左寄りとすることが考えられる。

【選択肢】 (a) 発展方程式、(b) 状態方程式、(c){x(0)\ne0}、(d){x(0)=0}、(e)安定、(f)漸近安定、(g)不安定、(h)すべての固有値の実部が負、(i)ある固有値の実部が負、(j)すべての固有値の実部が正、(k)ある固有値の実部が正、(l)状態フィードバック、(m)状態オブザーバ、(n)A-BF、(o)A-HC、(p)A-HC-BF、(q)可制御、(r)可観測、(s)可安定、(t)可検出、(u){{\rm rank}\ [B,AB,\cdots,A^{n-1}B]=n}、(v){{\rm rank}\left[\begin{array}{c}C\\CA\\\vdots\\CA^{n-1}\end{array}\right]=n}、(w)アクチュエータ、(x)センサ、(y)PID、(z)オブザーバベース

次に、可検出性と可観測性の証明は、とりあえず次を参照してください。

可観測性