LQI制御…Homework
[1] 次の可制御かつ可観測な次系を考えます。
ここで、状態方程式には、操作入力のほかに、定値外乱が加わっていること、出力方程式における行列をと書いたことに注意します。いま、出力変数の一部やそれらの組合せからなる新しい個の被制御変数(controlled variables)を
のように選び(は可観測対)、定値外乱があるにも拘わらず、制御目的
を達成したいとします。ここで、定数ベクトルは個の設定値からなる。もし制御目的(4)が物理的に可能とすると、ある状態と入力が確定し
の関係を満足しているはずです。したがって、どのようなとに対しても、とが定まるように、被制御変数(3)を
が成り立つように選ぶものとします。
図1 積分動作を加えた状態フィードバックによる閉ループ系
[2] さて、制御目的(4)を達成するために、図1に示すような、つぎの積分動作を加えた状態フィードバックを考えます。
ここで、第2項は積分動作を表しています。このようにを定義すると
を得ます。(1)と(8)を合わせて
を得ます。(9)に、(7)すなわち
を代入すると、閉ループ系は、つぎのように表されます。
いま、は安定行列であるとします。このとき、は正則であり、つぎのように書けます。
よって、の逆行列は、公式
を用いて
ここで、
に注意して、整理すると
のように計算されます。ところで、(11)から
を得ます。この第1ブロック行は、(5)より
となって、(5)の第2ブロック行から制御目的(4)が成り立ちます。また、(17)の第2ブロック行から
を得ます。ここで、設定値は既知だから、に関係した項をフィードフォワードして、速応性を改善できます。すなわち、制御目的(4)を達成する制御方式は
のように表され、ここで、はつぎのように決定できます。
[3] これまで、閉ループ系(11)において、は安定行列であるとしていました。ここでは、これを満足させるための具体的手段として、先に学んだLQ制御を使うことを考えます。LQ制御の議論における閉ループ系は自励系(入力をもたない系)を前提にしていましたが、本章における閉ループ系は入力をもつことに注意が必要です。この前提を満足させるために、定常状態との差をとって得られる偏差系(error system)が用いられます。
制御目的(4)が達成されたとき成り立つ(5)より
を得ます(は定数ベクトル)。まず、(9)から(22)を引いて、つぎの偏差系を得ます。
偏差系E1:
この両辺を微分すれば、状態変数の中の定数ベクトルを除くことができて
偏差系E2:
を得ます。さらに、(1)と(3)をまとめた
から(5)を引いて、つぎの関係式が成り立ちます。
これに基づいて、偏差系E2に座標変換を行えば
偏差系E3:
を得ます。ここで、つぎの関係式を用いました。
●これら3つの偏差系E1,E2,E3はすべて可制御ですが、どれを用いるのがよいのでしょう?
偏差系E1に対する安定化状態フィードバックを
とします。これによりを安定行列とすることはできますが、(30)は実装上の難があります。
偏差系E2に対する安定化状態フィードバックを
とします。これによりを安定行列とすることはできますが、LQ設計時の重み係数の決定に難があります。
偏差系E3に対する安定化状態フィードバックを
とします。これによりを安定行列とできます。一方、(32)は(26)を用いると
と書けます。したがって
も安定行列となります。そして、
とおいて、(33)の両辺を積分すれば、制御測(7)が得られます。このことは偏差系E3の優位性を示唆しているといえます。
[4] 以下に、偏差系E3をLQ制御により安定化して、積分動作を加えた状態フィードバックを構成する手順を示します。
アルゴリズム <LQI制御>
ステップ1 被制御変数の決定
が正則となるように()、セレクタ行列を決めます(一般に、多入力多出力系の場合、どの操作変数でどの被制御変数を制御するのかについて、物理的に実現可能な1対1対応を考えることが重要です。その際、被制御変数はフィードバックされるので観測量の中から選ばれなけばなりません)。
ステップ2 偏差系の安定化
偏差系
を、状態フィードバック
によるLQ制御で安定化します。その際、評価関数としては
を用います。ただし、は可観測対とします。
ステップ3 積分動作を加えた状態フィードバックの構成
つぎの積分動作を加えた状態フィードバックを構成します。
ただし
この手順で設計された積分動作を加えた状態フィードバックによる制御方式をLQI制御(LQ control with integral action)と呼びます。