現代制御 制御対象はダイナミックスの支配原理(物理)に逆らっては動けません。その支配方程式は微分方程式で記述されるので、制御対象のモデルもここを出発点とするのが自然です。制御とは「平衡状態の安定化」と捉えることができます。これらに沿う制御理論が現代制御(状態空間法)です。現代制御の理論にはストーリ性があって、漸近安定性、状態フィードバックと可制御性、状態オブザーバと可観測性、最適制御など、極めて美しく体系化されています。最適制御では、なんと未知変数が行列の場合の2次方程式(リッカチ方程式)を解きますが、現在の計算機を用いればこれは難なくこなせます。また、多入力・多出力系や閉ループ系の扱いもスマートです。これまで制御を意識したモノつくり(対象を敢えて不安定にして制御で安定化)が多くのイノベーションを生み出してきました。本セミナーでは現代制御の基礎知識を説明します。
ロバスト制御1(ゲインスケジューリング制御) 現代制御では制御対象のモデルを準備しなければなりませんが、一般には正確なモデルの構築は困難です。そこで、モデルの不確かさをどう扱うかが議論され、ポストモダンとしてのロバスト制御理論が発展してきました。特に、古典制御でのループ整形の考え方をベースにした混合感度問題への定式化がよく知られています。これはモデルの不確かさを入出力伝達特性の摂動によって間接的に扱う場合ですが、支配方程式のパラメータの不確かさを直接的に扱う場合もあります。パラメータが時間変動しない場合はラウスフルビッツの安定判別法が有用であり、変動パラメータの場合はゲインスケジューリングを行うことが試みられてきました。近年は線形行列不等式を制約条件とする最適化問題への定式化によって、混合感度問題やゲインスケジューリング問題の求解計算が容易になってきました。本セミナーではゲインスケジューリング制御の基礎知識を説明します。
ロバスト制御2(スライディングモード制御) ロバスト制御に対するもう一つのアプローチがスライディングモード制御です。これは可変構造制御の一つで、線形制御則とスイッチング制御則からなります。瞬時瞬時に制御則を切り替えることにより、切り替えない場合に比べて優位性を生み出すことができます。スライディングモード制御は「スイッチング直線の近傍」まで状態を持っていく動作と、「スイッチング直線内に閉じ込める」2つの動作からなり、これによりモデルの不確かさに対応できるロバスト制御の特徴を持たせることができます。スイッチング関数の選択には現代制御のLQ設計法や固有ベクトル配置法が用いられ、リヤプノフ関数を構成することにより閉ループ系の安定性を保証することができます。本セミナーではスライディングモード制御の基礎知識を説明します。