補遺:偏差系の安定化SM制御…Homework
レギュレータ問題は平衡状態の安定化、追値問題は他の平衡状態への安定化を意味します。LQI制御のところでみたように、偏差系を導入すれば、追値問題は偏差系の安定化問題となります。この観点から積分動作導入による追従SM制御を見直してみます。
[1] 定値外乱を受ける制御対象
の出力を、次のコマンド(定値目標)
に追従させることを考えます。そのために、積分動作
を考え、次の拡大系を構成します。
定常状態では
を得ます(,,は定数ベクトル)。まず、(4)から(5)を引いて、つぎの偏差系を得ます。
偏差系E1:
この両辺を微分すれば、状態変数の中の定数ベクトルを除くことができて
偏差系E2:
を得ます。さらに、(1)の状態方程式と観測方程式をまとめた
から、(5)すなわち
を引いて、つぎの関係式が成り立ちます。
これを用いて、偏差系E2に座標変換を行えば
偏差系E3:
を得ます。ここで、つぎの関係式を用いました。
以下では、この偏差系E3が標準形となっていることに注意して、SMCを設計します。
(11)を、改めて次のように書きます。
スイッチング関数として、次式を考えます。
(15)に対して、座標変換
を行って、次式を得ます。
以下では、が安定行列となるようにスイッチング関数が選ばれていると仮定します。
このとき、スライディングモード制御則(SM制御則、SMC則)
を、2次安定性
すなわち
が成り立つように決定します(, , )。
[2] 可到達性の検討
等価制御は
のように得られます。(20)の第1項は、この等価制御をベースして
のように構成します(は安定行列)。このとき閉ループ系は次式で与えられます。
すなわち
ここで、は安定行列なので
を満たすを選ぶことができます。これを用いて
と選びます(は定数)。このとき次式が成り立ちます。
[3] スライディングモードの検討
は安定行列なので
を満たすを選ぶことができます。
[4] 積分動作をもつSMC
上で求めた偏差系E3に対するSMCは次式で与えられました。
これらを積分して、制御対象(1)に対する積分動作をもつSMCを導出します。
まず(32)は(10)を用いて次式のように書けます。
これを積分して
次に(33)は(10)を用いて次式のように書けます。
これを積分すれば
ここで、に注意し、(25)の第1式を用いては
となって元の状態方程式となりますが、を無視し、の近似値を使うことも一手段かもしれません。
[5] 数値例(1)
, の場合のシミュレーション結果を次に示します。
[5] 数値例(2)
, の場合のシミュレーション結果を次に示します。
演習…Flipped Classroom
MATLAB |
|
SCILAB |
|