伝達特性…Homework
[0] 次系の応答の相互関係は次のようにまとめることができました。
図1 線形系の時間応答
ここで、次系のインパルス応答が分かれば、どのような入力を与えられても出力を計算できます。または伝達関数が分かれば同様のことが言えます。したがって次系は漸近安定であるとして、その性能(伝達特性)の評価はインパルス応答または伝達関数を用いて行われます。伝達関数は状態空間表現のうち可制御かつ可観測な部分しか反映しないので、以下ではは可制御対、は可観測対と仮定しておきます。
[1] からへの写像の「伝達特性」をどう測るかを考えます。これはスカラの場合は正比例の関係ですから、比例定数に相当する量を求める話になります。
図2 線形写像
サイズの行列の次の特異値分解を考えます。
ここで、で、とは直交行列です。
したがって、次のような3つの線形写像に分解されます。
図3 特異値分解
次元ベクトルのノルムとして、次の3通りがよく用いられ、それぞれ1ノルム、2ノルム、ノルムと呼ばれます。
以下では、ベクトルのノルムとして、2番目の2ノルムを考えます。
このとき、次が成り立ちます。
すなわち
したがって、線形写像の伝達特性は、行列の2ノルム
すなわち行列の最大特異値(行列またはの最大固有値の正の平方根)によって測られます。
[2] 入力から出力への漸近安定な次系の「伝達特性」をどう測るかを考えます。
図4 n次系
次系の入出力応答は次式で表されます。ただし、とします。
これをフーリエ変換しますと次式を得ます。
いま時間関数のノルムを次のように定義し、このノルムが有界な時間関数の集合をと表記します。
このとき、次のパーセバルの定理
および周波数伝達関数行列の2ノルムに関する不等式
に注意して、次式が成り立ちます。
すなわち
これに基づいて、次系のノルムを次式で定義します。
●いま、任意の複素数の特異値はであることに注意すると、スカラ系のノルムは、ゲイン曲線の最大値であることがわかります。多変数系に対してをプロットした曲線はプロットと呼ばれています。
●次の直達項をもつn次系を考えます。
図5 直達項をもつn次系
このとき、インパルス応答と周波数伝達関数は、それぞれ
となりますが、上の議論はそのまま成り立ち、ノルムを定義できます。
[3] 漸近安定な次系の「伝達特性」を測るもう一つの方法は、すべてのインパルス応答の2乗面積の総和によるものです。入力出力次系のインパルス応答は
の個あります。いま任意の行列のすべての要素の2乗和はまたはで表されることに注意します。すべてのインパルス応答の2乗面積の総和は
または
のように表されます。ここで、とはそれぞれリャプノフ方程式
の解であることに注意しておきます。に注意して
の正の平方根を次系のノルムと呼びます。
●直達項をもつn次系の場合は、インパルス応答
の2乗面積の総和は発散してしまうので、ノルムはできないことに注意します。
Note B21 1次系のパーセバルの定理
1次系
のインパルス応答と周波数伝達関数の絶対値は
となります。まずパーセバルの定理
が成り立つことは次のように確かめられます。
また1次系のノルムは、複素数の特異値がその絶対値であることに注意して