可安定性と可制御性…Homework
[1] ある平衡状態周りの挙動が線形状態方程式
で表される制御対象に対して、状態フィードバック
による閉ループ系
を安定化できる条件について調べます。
●状態フィーバックにより安定化できることを可安定性と言います。
【可安定性の定義とその等価な条件】
定義DS: 状態フィードバックにより安定化可能 条件S1: (はのすべての不安定固有値) 条件S2: (はのすべての不安定固有値) |
証明はあとで述べますが、可安定性の判定は行列とを用いて行われるので、可安定性が成り立つとき、対は可安定対という言い方をします。
●可安定性の十分条件として次の可制御性が知られています。
【可制御性の定義とその等価な条件】
定義DC: 任意初期状態を,任意有限時間内に,任意状態に移動可能 条件C1: 条件C2: 条件C3: を選んで,の固有値を任意に設定可能 条件C4: (はのすべての固有値) 条件C5: (はのすべての固有値) |
可制御性の判定も行列とを用いて行われるので、可制御性が成り立つとき、対は可制御対という言い方をします。条件C1の積分式を可制御性グラミアン行列、条件C2の行列を可制御性行列と呼びます。また条件C4を満足するの固有値をは可制御固有値、満足しない固有値を不可制御固有値と呼びます。
[2] 以下では、可制御性の条件について、まず
定義DC条件C1条件C2
を証明します。特に、命題を証明するのに、
を用いて矛盾が出ることを示していることに注意してください。
●<定義C0条件C1> ある時刻で可制御性グラミアン行列が正定でないとします。このとき,次元ベクトルが存在して
が成り立ちます。これより
を得ます。いま,初期状態をに移すことを考えると
と書けます。ここで,変数変換により
となることに注意して,(6)の左からをかけると
を得ます。ここで,のときとなり,矛盾が生じます。よって条件C1が成り立ちます。
●<定義DC条件C1> (1)に対して,において,入力を
と定めれば,初期状態が移される先の状態は、(9)を(1)の解
に代入して,次式に注意すれば,と計算されます。
以上で,は任意であるので、定義DCを得ていることになります。
●<条件C1条件C2> 可制御性行列は行フルランク(行数に等しい階数)とはならないとすします。このとき,ある次元ベクトルが存在して
が成り立ちます。ケーリー・ハミルトンの定理を用いて
したがって
が成り立ちます。これより,ある時刻に対して
を得ますが,これは条件C1と矛盾です。よって条件C2が成り立ちます。
●<条件C1条件C2> ある時刻で可制御性グラミアン行列が正定でないとします。このとき,に対して(14)が成り立ちます。この第回微分を求めて,とおくと
これより,(12)を得ますが,これは条件C2と矛盾しています。よって条件C1が成り立ちます。
●あとで<条件C3条件C4条件C5条件C2>を可制御標準形を求めて、<条件C2条件C3>を可制御正準形を求めて示します。
●上の可制御性と可安定性のさまざまな条件のうち、理論展開では条件C5と条件S2が、数値計算では条件C4と条件S1がよく用いられます。特に、条件C5と条件S2による判定法は、PBH(Popov-Blevitch-Hautus)法と呼ばれています。
演習 A32-1…Flipped Classroom
次のコードは、PBH法の骨格となる部分を示している。これを実行して得られる変数contとstabの解釈を行え。
MATLAB |
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演習 A32-2…Flipped Classroom
倒立振子CIP、CIP2、AIP、PIP、DIPの可制御性を調べよ。
MATLAB |
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Note A32 可制御性は状態フィードバックにより不変
が可制御対ならばも可制御対であることは次のように証明されます。
条件C5より,任意のに対して
成り立つので,これを仮定して
を示します。実際,より
を得ますが,このようなは,仮定(1)より,でなければなりません。