リャプノフの安定定理
非線形システム理論に関する文献:
Hassan K.Khalil: Nonlinear Systems, 3rd ed., Prentice Hall, 2002
から次の定理(Theorem 4.1, p.114)を引用します。
リャプノフの安定定理 状態方程式
に対して、その平衡状態 を含む領域 を考える。いま で連続微分可能な実数値関数 に対して このとき ならば、平衡状態 は安定、また ならば、平衡状態 は漸近安定である。 |
すなわち、(2)と(4)を満足するリャプノフ関数の存在を示して(発見して)、非線形系(1)の漸近安定性を示すことができます。
2次安定性
非線形系(1)に対してリャプノフ関数
を考えます。これを微分して(1)を用いると((1)の解に沿って微分して)
となります。このとき2次安定とは
が成り立つことを言います。これは、次式を示すことができ、漸近安定性を意味するからです。
ただし
以下では、これを導出します。
●予備知識として、任意の対称行列に対して、特異値(固有値に等しい)を
と表記し、また任意のに対して
および
が成り立つこと使います。
●そこで
に注意して、次式を得ます。
これから
ここで
に注意して
すなわち
を得ます。これから(8)が成り立ちます。なお一般には
ですが、とを対角行列に選ぶときは等号が成り立ち、(8)においてではなくを用いることができます。もう少し詳しくは、対称行列とが可換()で、同時対角化可能(とを対角行列とするが存在)の場合には等号が成り立ち、(8)においてではなくを用いることができます。
Note C11 (11),(12)の導出
●任意の正定行列(サイズ)に対して、次の特異値分解を考えます。
ここで、は対称行列なので固有値は実数、しかも正定なのでそれらはすべて正であること、したがって特異値はの最大固有値、特異値はの最小固有値であることに注意してください。このとき、を満たすの平方根行列は
で与えられます。また、の逆行列は
のように表されます。これから(12)は自明です。
いま、を用いて線形写像を考えると、これは3つの線形写像に分解されます。
任意の次元ベクトルのノルムとして、次の2ノルムを考えます。
このとき、次が成り立ちます。
すなわち
一方
より、次式が成り立ちます。
したがって、(7)と合わせて、次式を得ます。
これを2乗して次が得られます。
すなわち(11)が導出されました。