[1] 柔軟構造物の制振問題をどう取り扱うかを考えて行きます。
この写真は米国の某大学で製作された制御実験装置です。柔軟ビームの一端をロボットアームで把持し、振動を抑制しながら回転させることが制御目的です。この柔軟ビームは水平方向ばかりでなく、垂直方向にも振動するのですが、ここでは水平方向だけの振動抑制問題を考えます。参考にしたのは次の文献です。
阿部・児島著:「無駄時間・分布定数系の制御」、コロナ社、2007
この本の6章「振動系」では、次のような制御対象「柔軟ビーム」を扱っています。
ここで、ビームの長さを[m]、断面積を
[m
]、密度を
[kg/m
]、縦弾性係数を
[N/m
]、断面2次モーメントを
[m
]、ハブの回転慣性モーメントを
[kgm
]、ペイロードを
[kg]とします。また、時刻
[sec]における、ハブの回転角を
[rad]、ハブの支持点から距離
[m]のビーム上の点の弾性変位を
[m]、その点の座標を
とします。
このときハブの支持点において次が成り立ちます。
いま、、
をそれぞれ
、
と略記すると、次式が成り立ちます。
以下では、双曲線関数、
をそれぞれ
、
と略記し、次の基本式を多用します。
,
,
,
また、次のような変分を取ることを頻繁に行います。
●柔軟ビームの運動方程式を、Hamilton Principleに基づいて導出します。
●
●
●
●
●
●以上から、ハミルトン原理を表す上式の各項を
のように得たので、次式が成り立ちます。
これから各変分の係数(下線部)を0と置いて、柔軟ビームの運動方程式として次式を得ます。
●高次項や高階微分項は微小であるとして、これらの近似を行います。まず第1式(13a)は
においてが微小であるとして、次のように近似します。
また、第2式(13b)と第3式(13c)は、が微小であるとして、次のように近似します。
これらを次のように無次元化します。
第1式(14a’):
第2式(14b):
第3式(14c):
第4式(13d):
すなわち、代表長さ、代表時間
、代表トルク
として、無次元化した柔軟ビームの運動方程式は次式となります。
ただし
[2] 以下では、モード法による求解方法を考えていきます。
そのために、を仮定すると
を得ます。ここで、変数分離を行います。
さらに、,
を仮定しますと
を得ます。これから
を得ます。さらにが満足すべき制約式を次のように得ます。
●これを満足するを、
としますと、次のモード関数群を得たことになります。
ただし
これらのモード関数はお互いに直交することが次のようにして示されます()。
●結局、弾性変位を、モード関数
を時間関数
で重み付けて
のように表します。この時間関数の支配方程式は
から得られます。まず、第1式(26a)から
を得ます。次に
を考慮して、第2式(26b)から
を得ます。すなわち時間関数は次式を満足すべきことがわかります。
●これから、柔軟ビームに関するもう一つの運動方程式として、次を得ます。
ただし
これから次の状態空間表現を得ます。
Note B64 モード関数
●ビーム(梁)の境界条件を、自由支持・ピン支持・固定支持と変えた場合のモード関数と振動数方程式を示します。ここで、 が解
を持つための条件
が使われていることに注意してください。
(藤田勝久:振動工学、森北出版より)
,
,
,
,
,
,
,
,
自由・自由支持の場合 (
)
ピン・ピン支持の場合
ピン・自由支持の場合 (
)
ピン・質点付自由支持の場合
固定・固定支持の場合
固定・ピン支持の場合
固定・自由支持の場合 (
)
固定・質点付自由支持の場合