LQ制御…Homework
[1] 可制御な制御対象
を安定化する状態フィードバック
の決定法を考えます。一つの方法は,閉ループ系
の時間応答に関する評価規範として,2次形式評価関数
を設定し,これを最小化する問題を解くことです。ただし、は可観測対とします。これによる状態フィードバックのゲイン行列は,リッカチ方程式
の解を用いて,次式で与えられます。
この証明はNoteに示しています。
[2] 以下では、代表的な2次系に対して、評価関数を設定して、ゲイン行列を求めてみます。その際、リッカチ方程式は4つの解候補を持ちますが、の条件、すなわち
を用いて()、解を1つに絞ることに注意してください。
●いま2次系(2重積分器)
を安定化する状態フィードバックを,評価関数
を最小にするように求めると
となります。実際、リッカチ方程式
を要素ごとに整理して
を得る。これは,まず第1式よりが2つ,つぎに第3式よりが2つ,さらに第2式よりが1つ定まり,つぎのように4組の解をもつ。すなわち
ここで,(*)だけが,を満たします。したがって
例題1 2次系(無定位系)
を安定化する状態フィードバックを,評価関数
を最小にするように求めると
また
を最小にするように求めると
例題2 2次系
を安定化する状態フィードバックを,評価関数
を最小にするように求めると
また
を最小にするように求めると
[3] 計算機でリッカチ方程式解くには、ハミルトン行列と呼ばれる
を考えます。このハミルトン行列の固有値は、実軸に対称ばかりでなく、虚軸にも対称となるという性質を持っています。これらのうち安定な固有値と対応する固有ベクトルを、次のように求めます。
これから
のように求められます。
●ハミルトン行列を経由してリッカチ方程式解くためのコードは次のようになります。
MATLAB |
|
SCILAB |
|
MATLABでは、関数lqrがリッカチ方程式解くために準備されています。
演習A52…Flipped Classroom
Note A52-1 行列による微分
いま、任意の行列の要素をで表すとき、スカラ関数を行列変数の各要素で微分して得られる行列をで定義します。このとき、行列のトレースについて、次が成り立ちます。
実際、
Note A52-2 LQ制御問題の解法
可制御かつ可観測な次系
に対する状態フィードバック
による閉ループ系
に対して、評価関数
を最小化するようにを決める問題を考えます。
閉ループ系における状態の振る舞いは次式で与えられます。
ここで、1次系の場合は初期状態はであればよかったのですが、一般の場合はインパルス応答となるようにの列ベクトルを考えます。各インパルス応答
に対する評価関数の総和は
と書けます。いまをラグランジュの未定定数として
を最小化する問題を考えます。ここで、制約条件は、リャプノフ方程式と呼ばれる
ですが、はが安定行列を意味することに注意します。
そこで、必要条件として次を得ます。
ここで、第2式から得られるを第3式に代入して
すなわち、リッカチ方程式と呼ばれるの行列方程式
を得ます。これからを求めて、は
のように得られます。このような制御方式をLQ制御と呼びます。
一方、十分性の議論は次のように行われます。まず、被積分項は次のように表すことができます。
実際、右辺にを代入し、リッカチ方程式を用いると
したがって、上記の両辺を積分して
を得ます。ここで、を前提とするので
を得ます。これからが評価関数を最小化することが分かります。
Note A53-3a 例題1(17)の導出
リッカチ方程式
を要素ごとに整理して
を得る。まず,第1式よりが
と求まる。つぎに,第3式よりは
となるが,より
でなければならない。さらに,第2式よりは
となる()。すなわち(1)の解として
を得ます(このときも満足されます)。したがって
Note A53-3b 例題1(19)の導出
リッカチ方程式
を要素ごとに整理して、上と同様にして導出されます。
Note A52-3c 例題2(21)の導出
リッカチ方程式
を要素ごとに整理して
を得る。まず,第1式よりが
と求まる。つぎに,第3式よりは
となるが,より
でなければならない。さらに,第2式よりは
となる()。すなわち(1)の解として
を得ます(このときも満足されます)。したがって
Note A52-3d 例題2(22)の導出
リッカチ方程式
を要素ごとに整理して、上と同様にして導出されます。
補遺 上述の議論では、次についての検討が必要です。
検討事項1 (9)の妥当性