5. 安定化を適切に行う

前章までに,状態フィードバックと状態オブザーバを組み合わせた安定化コントローラ(オブザーバベース\,コントローラ)を,どのような条件のもとで構成できるかについて検討し,それが可制御性と可観測性(可安定性と可検出性)であることを述べた。そこでつぎに,状態フィードバックと状態オブザーバの構成を合理的に行うことを考えたい。

まず,状態フィードバックについては,代表的な方法として最小2乗規範に基づく方法がある。これは,状態フィードバックによる閉ループ系における時間応答の2乗面積が最小となるように,状態フィードバックゲインを定めるものである。ここで,状態変数の時間的振る舞いの2乗面積ばかりでなく,どのような入力を用いて閉ループ系を構成したかを評価するために,入力変数の時間的振る舞いの2乗面積についても同時に考えることが肝要である。こうして得られる制御方式を,状態フィードバックによる「LQ制御」と呼ぶ。この状態フィードバックゲインは,「リッカチ方程式」と呼ばれる行列に関する2次方程式を解いて求めることができる。

つぎに,状態オブザーバについてであるが,オブザーバベース\,コントローラによる閉ループ系における時間応答の2乗面積の和を最小化する立場から考える。この値は,理想的な状態フィードバックだけの場合と比べて,状態オブザーバを用いるので増加(劣化)する。そこで,この増分が小さくなるようにオブザーバゲインを定めることが行われる。

本章で述べる制御方式は「最適制御」と呼ばれるものの一つで,歴史的には「LQG理論」として確率システムの制御の立場から研究されてきた。しかし,ここでは確定的な議論にとどめて,主要な結果を説明した。