前章で,状態フィードバックによって安定化可能である条件(可安定性)や閉ループ系の固有値を任意に設定できる条件(可制御性)を学んだ。ただし,すでに指摘しておいたように,状態フィードバックという制御手段は,すべての状態変数にセンサを付けること()が前提となる。しかしながら,これはいつも満足されているとは限らないので,状態変数を推定することも考えておかなければならない。現代制御は,その手段として「状態オブザーバ」を提供している。これは一つの動的システムで,これを状態空間表現で表すとき,アナログ回路や計算機で実現される。その入力は制御対象の入力と出力であり,また出力は制御対象の状態の推定値(時間の経過とともに状態の真値に近ずく)である。したがって,状態オブザーバの出力に状態フィードバックのゲイン行列をかけて,状態フィードバックを近似的に実現する方法,すなわち「オブザーバベース\,コントローラ」がよく採用される。 \par それでは,状態オブザーバは,制御対象の状態空間表現が与えられるとき,いつでも構成可能なのであろうか。答えはノーである。状態オブザーバが構成可能な条件は「可検出性」として知られている。可検出性は,前章で学んだ可安定性と密接な関係(双対関係)にある。これについて学ぶのが本章の一つの目標である。可安定性を強めた概念として可制御性があったように,可検出性を強めた概念として「可観測性」があり,これについても本章で学ぶ。最後に,2~4章の重要な結論として,制御対象の安定化可能条件が可安定性と可検出性であり,その手段がオブザーバベース\,コントローラであることを述べる。 |