7. 非線形の運動方程式から始める

これまで扱ってきた制御対象は,その運動方程式が線形の微分方程式で表される「線形系」としていた。ところが実際には,例えば,ロボットアームの運動方程式に見られるように,非線形の微分方程式で表される「非線形系」が多い。このとき,これまで学んできた線形系に対する制御理論(LQ制御やLQI制御)はどのように役立つのだろうか。

まず,運動方程式(高階の非線形微分方程式)から「非線形状態方程式」を1階の連立非線形微分方程式として求めておく。つぎに,物理的な釣り合いの状態,すなわち「平衡状態」を考える。その平衡状態付近での運動を,「線形化」された状態方程式で表し,これに対して例えばLQI制御を適用する。

このアプローチは1入力1出力系ばかりでなく多入力多出力系に対しても適用できて,これまで数多くの制御問題の解決が図られてきた。その実績こそが,前章までに述べてきた線形システム制御論の有用性を示唆し,これを学ぶことの強い動機付けを与えている。

そこで,本章では,運動方程式が非線形の微分方程式で表される対象の制御問題として,水タンクの水位制御問題を考え,LQI制御を適用しながら線形システム制御論に基づくアプローチを説明する。皆さんは,計算機を用いて,LQIコントローラの数値計算と閉ループ系の時間応答シミュレーションに挑戦してほしい。そして,できれば適当な制御実験を試みてほしい。自分で考えたアルゴリズムで物をうまく動かすことができたときは,きっと小躍りしたくなるであろう。