SMオブザーバ
[1] 制御対象の状態空間表現として次式を考えます。
ただし、はモデル誤差、非線形要素、外乱などの影響を表し、次のマッチング条件を満たすとします。
さらに次の3つを仮定します。
仮定 は可制御対
仮定 (相対次数1)
仮定 の不変零点は安定(最小位相系)
一般性を失うことなく、(1)は次のSM標準形であるとします。
●これに対して、次のSMオブザーバを考えます。
ここで、はが安定行列となるように選ばれているとします。また、
を満足すると、あるに対して
が満足されているものとします。このとき、は
のように与えます。上の仮定との下で、SMオブザーバの誤差は次の超平面上でスライディングモードを達成します。
●以下では、を仮定します。座標変換
を行なうと
を得ます。したがって
すなわち
ここまでの手順を、関数smobs3としてプログラムすることにします。
追従SMI制御
[2] 制御対象
の出力を、コマンド(次式の解)
に追従させることを考えます(は安定行列)。そのために、積分動作
を導入し、次の拡大系を構成します。ここで、(1)はすでに標準形であるとしています。
これを、次のように分割し直しても標準形であることには変わりありません。
ただし
●この積分器による拡大系を安定化できれば、積分器の値は定値となり、被積分項の値は零となり、はへ漸近します。そこで、SM制御によって拡大系を安定化し、追従制御系を構成することを考えます。この制御系は特別なの場合を含みますので、まずスイッチング関数として、次式を考えます。
(5)に対して、座標変換
を行って、次式を得ます。
ただし
ここで、が安定行列となるように行列が選ばれているとします。
●特別なの場合のスライディングモードはで表されますが、一般のの場合のスライディングモードは
で表されるとします。ここで、の選び方についてはあとで述べます。
●以上の準備の下で、制御則は次式で表されます。
これをSMオブザーバを用いて実施する場合は次式を用います()。
Note C91 の選び方
●積分動作で示した閉ループ系の状態方程式の一部
を考えます。定常状態でスライディングモードが達成されたとすると
を得ます。とするためには
において、が正則であれば、を
と求めることができます。そこで次式に注目します。
これよりが正則であるための条件が次のように求められます。
これは不変零点が複素平面原点にはないことを意味しますが、仮定により保証されており、の正則性が成り立ちます。