1次系の追値制御…Homework
[1] 定値外乱をもつ1次系
を考えます。これに状態フィードバック
を行うと、閉ループ系は
となります。この時間応答は
となり、平衡状態への復帰はできないことがわかります。そこで、フィードフォワード項をもつ状態フィードバック
を行うと、閉ループ系は
となり、この時間応答は
で表されます。ここで、フィードフォワード項を
と定めれば、定値外乱の影響を除去できます。しかしながら、ここでは外乱は一定であることはわかっているが、その値までは分からないと仮定して話を進めていきます。したがって、外乱の値を推定する仕組みを工夫する必要があります。
●いま、その仕組みとして、積分動作
を加えた状態フィードバック
を考えます。これによる閉ループ系は
となります。ここで、の特性方程式は
ですが、その解が複素左半平面に含まれるように、とを適切に選んでおきます。
<このパートは最初は読み飛ばして結構です> このとき閉ループ系の時間応答は、が正則行列なので に注意して、次のように計算できます。
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したがって、のとき、次式が成り立ちます。
すなわち、積分動作をもつ状態フィードバック(10)により、定値外乱の影響を受けずに、平衡状態に復帰できていることが確かめられます。
●定値外乱をもつ1次系(1)に対して、制御目的
を達成するために(は目標値)、上述の積分動作を次のように変えてみます。
これを加えた状態フィードバック
による閉ループ系は
となるので、のとき、次式が成り立ちます。
すなわち、積分動作をもつ状態フィードバック(19)により、定値外乱の影響を受けずに、制御目的(17)を達成できていることが確かめられます。
(21)から次式を得ます。
これから第2項を、図2のように、フィードフォワードしておくことが考えられます。
図1 積分動作を加えた状態フィードバックによる閉ループ系
●、、、、、として、次のシミュレーション結果を得ます。
図2 図1のシミュレーション例
演習A04-1…Flipped Classroom
図2のグラフを描け。
MATLAB |
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SCILAB |
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[2] 定値外乱をもつ1次系
に対して、制御目的
を達成するために(は目標値)、積分動作
を加えた状態フィードバック
を考えます。これは、実際には、状態オブザーバ
によって推定された状態を用いて
を実施することになります。この積分動作を加えたオブザーバベースコントローラは、(29)を(28)に代入した
と、(26)を合わせて、つぎのように表されます。
これによる閉ループ系は、(27)を(24)に代入した
と、(26)、(30)を合わせて
のように表されます。そのブロック線図を図3に示します。
いま、閉ループ系(33)に、座標変換
を行えば
となります。オブザーバの誤差方程式が分離されており、とを独立に設計してもよいことが分かります。
ここで、の特性方程式の解は左半平面にあるとすると、(35)より、のとき、次式が成り立ちます。
すなわち
したがって
を得ます。したがって、定値外乱が存在するときは状態オブザーバに関して定常偏差が残るにもかかわらず、制御目的(24)が成り立つことがわかります。
図3 積分動作を加えたオブザーバベースコントローラによる閉ループ系
1次系のLQI制御…Homework
[3] 定値外乱をもつ1次系(23)に対して、制御目的(24)を達成するための制御則として、積分動作(25)をもつ安定化状態フィードバック(26)を考えます。これによる閉ループ系
に対して、評価関数
を最小化するように と を決めるLQI制御問題を考えます。いま、出力方程式
を定義すると、閉ループ系の応答は
<このパートは最初は読み飛ばして結構です> より
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となります。ここで、第2項の定数項があるので、評価関数
は発散してしまいます(そもそも外乱は未知としますので計算もできません)。
●そこで、定値外乱が抑制されているときは、平衡状態()はに、平衡入力()はに変わっていることに注意し、これとの差を表す状態方程式を考えます。まず定値外乱抑制前の状態方程式は(1)と(2)を合わせて
となります。また、定値外乱抑制後には
が成り立ちます。両者を辺々引き算して
となります。これを偏差系E1と呼ぶことにします。これに安定化状態フィードバック
を行った閉ループ系は
となります。いま出力方程式
を定義して、評価関数
を最小化して、(50)のフィードバックゲインとを決める制御方式を偏差系E1に基づくLQI制御と呼びます。
●さて、偏差系E1すなわち(49)の両辺を微分すると2つめの偏差系E2
を得ます。また(49)は次のように変形できることに注意します。
これを(15)に代入すると
この左からをかけると3つめの偏差系E3
を得ます。これに安定化状態フィードバック
を行った閉ループ系は
となります。いま出力方程式
を定義して、評価関数
を最小化して、(59)のフィードバックゲインとを決めます。(55)を(59)に代入して
これを積分して
を得ます。このようにして(3)のフィードバックゲインとを決める制御方式を偏差系E3に基づくLQI制御と呼びます。
[4] 以下に、偏差系E3をLQG制御により安定化して、積分動作を加えたオブザーバベース コントローラを構成する手順を示します。
アルゴリズム <1次系のLQGI制御>
入力パラメータ ステップ1: 偏差系の安定化 偏差系 を、状態フィードバック によるLQ制御で安定化します。その際、評価関数としては を用いる。さらに、とを、次式から計算します。 ステップ2: オブザーバゲイン の決定 を解いて,を求め,をつぎのように定める。 ステップ3: 積分動作を加えたオブザーバベース コントローラの構成 、、から、つぎを構成します。 ただし
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この積分動作を加えたオブザーバベースコントローラによる制御方式をLQGI制御(LQG control with integral action)と呼びます。