特異値分解(Singular-Value Decomposition)
●をサイズの行列()とします。このとき、サイズの直交行列とサイズの直交行列が存在して
が成り立ちます。ここで、サイズの行列は次を満たします。
●だから、仮定より、は個の正固有値と個の零固有値をもち、互いに直交する固有ベクトルをもちます。そこで、の固有値の正の平方根を、大きい順に、のように表し、対応する固有ベクトルをを満足するようにとることができます。いま、を上のように、また
とおくと、は直交行列となり、つぎが成り立ちます。
第2式の左から、をかけて
また、とおくと、第1式からを得ます。そこで、をが直交行列となるように選ぶと
が成り立ちます。
●行列の特異値分解は
のように与えられることを確かめます。
●のサイズはですが、のサイズはであるので、を計算するととなります(サイズの行列の特異値を手計算で求めるには、とのが同じ非零固有値をもつことから、サイズの小さいほうの固有値計算を行えばよい)。これから、の固有値はで、その正の平方根が特異値で、上のの対角成分の特異値は大きい順に並べる約束ですから
のように、とが決まります。つぎに、については、視察によって
とします。ここで、とが直交しており、の制約があります。上式からが出て、と定まります。
行列のノルム
● からへの写像の「伝達特性」をどう測るかを考えます。これはスカラの場合は正比例の関係ですから、比例定数に相当する量を求める話になります。
サイズの行列の次の特異値分解を考えます。
ここで、で、とは直交行列です。
したがって、次のような3つの線形写像に分解されます。
●次元ベクトルのノルムとして、次の3通りが知られています。
以下では、ベクトルのノルムとして、2番目の2ノルムを考えます。
このとき、次が成り立ちます。
すなわち
したがって、線形写像の伝達特性は、行列の2ノルム
すなわち行列の最大特異値(行列またはの最大固有値の正の平方根)によって表されます。
●行列のノルムについて次式が成り立ちます。
(8)より
に注意して
●一方、ベクトルの2ノルムについて次式が成り立ちます。
これらは(9)の特別な場合と考えられますが、ここでは直接導出してみます。
いま、に関する2次方程式
を考えると、この実数解は1個または0個となることから、この判別式は零または負でなければならないので
より
すなわち(12)の第2式が得られます。また、第1式は、次式から得られます。
●ちなみに、行列のフロベニウスノルムは
で定義されます。これは
と表せるので、次式が成り立ちます。
行列積のフロベニウスノルムについても
が成り立ちます。
連立1次方程式
次の線形方程式(連立1次方程式)を考えます。
ここで、はフルランク()とします。
の場合(未知数の数が方程式の数より大きい場合)、(1)はunder-determined(劣決定)と呼ばれ、の特異値分解を代入して次のように書けます。
(2)の解候補として
を考えます。より第1項と第2項は直交することから
(3)においてとして得られるは、を最小化する最小ノルム解と呼ばれます。
の場合(未知数の数が方程式の数より小さい場合)、(1)はover-determined(過決定)と呼ばれ、の特異値分解を代入して次のように書けます。
(5)の解候補として
を考えます。において、
ここで、より第1項と第2項は直交することから
(6)はを最小化する最小2乗解と呼ばれます。