定義
●次正方行列の行列指数関数
●諸性質
とは自明でしょう。
は一般項が次式となるためです。
注意すべきは、で、指数法則は可換な行列に対してのみ成立することです。これは
が
と等しくなるためにはとが可換()でなければならないからです。
はでとおけば出ます。
は一般項が
となることから出ます。
はの両辺を積分して
となることから出ます。
2次の行列指数関数
●の場合、の実Jordan標準形は次の3つに分類されます。
このときの行列指数関数は次式で与えられます。
は、次式において、とが可換であることから出ます。
は、次式において、とが可換であることから出ます。
3次の行列指数関数
●の場合、の実Jordan標準形は次の4つに分類されます。
このときの行列指数関数は次式で与えられます。
一般の行列指数関数
●一般の場合、の実Jordan標準形は
()
すなわち、次の2種類のジョルダン細胞のブロック対角行列となります(, , は実数)。
このときの行列指数関数は次式で与えられます。
は、次式において、とが可換であることから出ます。
は、まず次式のようなとの和となります。
ここでクロネッカ積に関する恒等式
を用いると、とが可換、とが可換であれば、とは可換となります(の場合、OKです)。また、次式が成り立つことが知られています。
高次系の漸近安定性
●行列指数関数を用いると、微分方程式
の解は次のように表されます。
ここで
と書けることに注意します(は適当な次実正方行列)。
したがって、任意のに対して、のときとなるための条件は
となります。これはのすべての固有値の実部が負を意味します。
●()の解のグラフを見ると、の場合は、漸近安定ではないが、発散はしないので、不安定とまではいえないのではないかと思うかもしれません。したがって零の固有値を不安定とみなすのか、安定とみなすか迷うところです。しかし、において、の場合、解はとなって、の第2要素が零でない場合は発散します。したがって、一般には零の固有値は不安定とみなします。
●において、のすべての固有値の実部は負または零の場合を考えます。いま実部が零の固有値の代数的重複度をとし、次が成り立つとします。
これが任意のに対して、のときが発散しないための必要十分条件であることが知られています。