いま対象が物理的な釣り合いの状態にあるとき,何らかの原因でこれが乱されたとしよう。このとき,対象に働きかけて,元の物理的な釣り合いの状態に速やかに戻すことは,最も基本的な制御目的として知られている。もし,対象自身に復元力が備わっていて,元の状態に戻ろうとする性質があれば,対象は「安定」(正確には「漸近安定」)と呼ばれる。このことを状態方程式$\dot{x}=Ax+Bu$から,どのように調べるかが,本章のテーマである。
そのために,まず状態方程式を解くことから始める。その解は,与えられた入力のもとでの状態の時間的振る舞い,すなわち「時間応答」を表している。これは,「零入力応答」と「零状態応答」の和として表される。ここで,零入力応答とは,入力を零すなわち$u=0$として,初期状態$x(0)\ne0$から出発して得られる時間応答であり,零状態応答とは,初期状態$x(0)=0$のもとで適当な入力が与えられるときの時間応答である。対象が物理的な釣り合いの状態にあって,これが何らかの原因で乱されたときの時間的振る舞いは,零入力応答に対応する。そこで,1次系$\dot{x}=ax$に対しては,$a<0$ならば安定である,また,$n$次系$\dot{x}=Ax$に対しては,「正方行列$A$の固有値の実部がすべて負であるならば安定」と判定すればよいことを学ぶ。 一方,零状態応答の中で重要なのは「インパルス応答」と呼ばれるもので,これが与えられると,どのような入力が与えられても,たたみこみ積分を行って出力が求まることを理解してほしい。 |